読書家になりたい

ボキャ貧が読んだ本の感想とか書くだけのブログです。

【読書感想】カラマーゾフの兄弟

東大教師が新入生に薦める本第1位、村上春樹も人生で巡り合った重要な三つの小説のうちの一つに選び、世界文学史上最高傑作との呼び声も高い、こちらの本読みました。

 

途中から読むのが止まらなかった

いろいろな所で絶賛されているのでずっと読みたいと思っていましたが、2000ページ以上あり、難解な文章、ロシア文学特有の登場人物の覚えづらさもあって何回も挫折した本です。それでも、中盤から面白くなるという話を信じて読み進めました。

上巻読むのに約三ヶ月。何なんだこのつまらなさ!と彼に怒りをぶちまけもしたものの、もう少し読めば面白くなる、という言葉に疑いを持ちつつも読み続ける事、更に一ヶ月。上巻の終わり辺りから本当に面白くなってきた事に戸惑っている内に、物語は加速していった。・・・息もつけない展開に思考も止まらず貪るように、中巻と下巻を私はほぼ三日ほどで読み終えたのだ金原ひとみ

個人的にも1巻の終盤あたりから面白くなってきて、それ以降中弛みせずずっと面白いというすごい小説でした。

物語全体を深く理解できたかというと、時代背景や宗教的知識が必要な部分はほとんど理解できていません。それよりも、善悪を兼ね備えた人の内面の見せ方が上手くて、読み進めるたびに登場人物への印象がコロコロ変わる楽しさがあったり、宗教、思想、恋愛、サスペンス、あらゆる要素が詰まった話なのにその全部が面白くて、読むのが止まらなかったです。

 

神は存在するのか

あらゆる要素がある小説ですが、やはりこの話の中心テーマは「神は存在するのか」であり、「大審問官」の章を語らずにはいられません。キリスト教徒であるドストエフスキーが神の行いを否定する話を書いた章であり、無宗教の多い日本人にも実感しやすい内容です。

つまるところ、「世界で何の罪のない人々が残酷な死を遂げている間、神は何をしてくれたか」ということです。「神に祈ってさえいればどんな罪でも許されるのか」、「善徳を積み重ねていくことに何の意味があるのか」。
心が弱いものにとって「選択の自由」は辛いものであり、人間の本質は大きなものに隷属し、自由を手放し、施しを受けながら生きていきたい生き物だということです。

 

神の存在を信じる物語の主人公「アリョーシャ」は「大審問官」を聞き、そして尊敬する長老の死を目の当たりにして、深い幻滅のなかをさまよいます。しかし、そこからの立ち直り、尊敬する師が行い続けた「全ての人を愛すること」を胸に秘め、満点の星空の下で大地に口づけをする場面は心に触れるものがありました。

そして、物語の終点に辿り着いた時、世界には生きる喜びがあふれていること、誰に隷属するでなく自らの意志で祈りをささげることが本当の意味での宗教だと感じました。

 

まとめ

とにかく長く難解な物語。じっくり意味を理解しながら読み進めるというよりは、「とりあえず読み終えて物語全体をまず知りたい」という欲求で読み進めましたが、展開を追っていくだけでもどんどん引き込まれる魅力がありました。

重厚な物語にどっぷりと浸かる楽しさがあり、今までの自分の宗教観とは全く違った価値観を味わう、こんな体験でした。