読書家になりたい

ボキャ貧が読んだ本の感想とか書くだけのブログです。

【読書感想】わたしを離さないで

ノーベル文学賞を受賞した著者の代表作なので、今更自分が言うようなことではないですが、個人的にも今まで出会ってきた本の中で思う最高傑作でした。

 

人生の切なさを問う

この本のテーマは「人生の切なさ」、これに尽きるかなと思います。人は死から逃れられません。生きたいかどうかなんて関係なく、唐突な理不尽な死だってこの世界には存在します。亡くなっていく人や周りの方の「離さないで」という声を裏切り、別れがやってきます。

著者はその切なさを丁寧に描いていました。途中発覚する重要な出来事は淡々と、反対に何気ない些細な日常も緻密に書くことで、人生は振り返れば全ての日々が大切な思い出になるのを感じさせられました。そして最後に、積み上げた思い出を全て手放します。

 

「死」について真正面から考えると、暗うつたる気持ちになります。思えば読んで心を動かされた本は多いですし、最終的に読んだ後の心は前を向いていました。なかなかない経験です、心を真後ろに引っ張られたのは

あまり「生きる意味」とかそういうことは考えても仕方のないことだと思っていましたが、この本を読み終えたら自然と考えてしまいます。誰の人生にも訪れる普遍的なテーマを描き切ることで、人間の根源に迫る問いを投げかける。ずっと自分の中に残り続けるであろう作品でした。